<げんた、口から泡事件>
年末の大西家は、わきたっていました。
それもそのはず、生まれてこのかた日本の国を出たことのない父ニシが、年末年始に海外旅行をするというのです。
なにしろ、ソファに寝っころがってテレビで海外の地震のニュースを見ながら、「ほら、外国に行くとこんな目にあうんだぞ。外国は怖いんだぞ。」と言うのが趣味なのです。
これが、名の知れた観光地の交通事故だったりしたら大変です。
鬼の首でもとったかのように「ほら見ろ、だから危ないんだ。お前らは言うこと聞いててよかっただろ。」と言うのですから。
そのうえ父ニシ母ニシの旅行先はカンボジア。。。
ともかくも、年末の大西家は非常事態だったわけです。
そんなある日、げんたが珍しく具合悪そうにしています。
いつも、父ニシが二階の寝室に上がっていこうとすると、喜んでついてくるはずのげんたが、
部屋の隅にうずくまって、ぴくりとも動かないのです。
父ニシは、どうも様子がおかしいとは思ったものの、抱き上げて寝室に連れて行って、
自分は布団の中へ。
さて、真夜中。父ニシは妙な物音に目を覚ましました。
「むむっ、げんたが泡を吹いてる!」
母ニシを急いで起こし、電気をつけて、二人で大慌て。
タオルだ水だとあたふたして、
「夜は動物病院やっていないしどうしよう……」と大パニック。
しばらくして、よくよくげんたを見てみると、確かに、泡を吹いていますが、
なんだか様子が変です。
泡は、泡だけど、よく泡立ちすぎ?!
しかも、いいにおいがする???
よーく見てみると、あたりには石鹸のカケラが混じった液体が。
そういえば、さっきお風呂に入って新しい石鹸をおろしたとき、、ほんの少し残っていたはずの小さな石鹸がなくっていたので、おやっと思ったのでした。
そのうえ、お風呂場を見に行ってみると、おろしたばかりの石鹸が半分しかありません。
父ニシと母ニシは頭を抱えてお片づけ。
当のげんたはスッキリした顔ですましています。
「石鹸は犬が食うと旨いのか?」
父ニシがぽつり。